聞き書き『モガ・鹿乃ちゃんの百年―ゼンチャン』

モガ鹿乃ちゃん2

印象的だった女学校の先生、ゼンチャン。2年生の時から学んだ「倫理」の先生で「善太郎だからゼンちゃん。禅宗の坊さんだったから名前とあわせてゼンちゃんって皆で呼んでいた」。「特に何ってことを教わった記憶がないけど、あたしはゼンちゃんが気に入っていたんだ」。鹿乃子は人でもモノでも場所でも、よく「あたし、気に入ってるんだ」という言い方をする。我が家で食事をする時も、室内にあるものを見まわして「コレ良いねー。あたし気に入ってるんだ」。どちらかというと服でもお皿でも、ドレッシーなものより、フォークロア調のデザインが好きだ。
「ゼンちゃんの上の名前は?」「うーん、何だったかな、ゼンちゃんの名字ね・・・・・・」「あ、そうだ、思い出した。イズヤマだった、伊豆の山・・・」。「卒業してしばらくしたら、新聞の死亡欄にゼンちゃんが載っていたよ。あたし死亡欄見るの好きなんだ」。「新聞に出るのは有名な人だから、ゼンちゃんも有名だったんだね。で、それを見た時にね、あー、とうとうゼンちゃんも死んだか・・・亡くなったか・・・って思ったよ」。途中で、亡くなった、と言い換えたが、気に入っていた師の話をカラッと話すのが鹿乃子らしい。
もともと感傷的な物言いをしない鹿乃子だが、性格なのか・・・