聞き書き『モガ・鹿乃ちゃんの百年―大正十二年九月一日』

モガ鹿乃ちゃん2

今から90年前の今日「関東大震災」があった。鹿乃子10歳。この日のことでよく覚えているのは、「お琴の練習を一人でしていたら、ぐらぐら揺れたから、お琴をまたいで外にでた。お琴なんてものは普通またいだりしないものだけど、あの時はまたいだ。お母さんが向かいの大きな家のほうに行こうって言ってね・・・それから、どうしたかな・・・よく覚えていない」家は四谷内藤町だった。そこには今も従姉たちが住んでいる。

「あーそうだ。お琴はね、小学校二年から女学校に行くまでやっていたけどね、おさらい会ってものに出るために着物を日本橋三越にお母さんと買いに行った。昔は松屋とか高島屋じゃなくてデパートといえば日本橋三越だったんだよ。」ちょっと遠くを見るような目をして「そうそう、三越の地下にね、下足番がいて、下駄の人は草履に履き替えた。靴の人にはカバーみたいなものを掛けてたね」。「デパートはいろんな人が見られるから面白くて好きだった。その頃からまわりの人間を見るのが好きだったんだ」。