聞き書き『モガ・鹿乃ちゃんの百年―廊下の白鳥』

モガ鹿乃ちゃん2

鹿児島から帰った正二郎一家は、四谷内藤町に住んだ。(そこには今も従姉が住んでいる)。鹿乃子は小学校に入学。当時の子どもはまだ着物が多かったが、鹿乃子はワンピースにエプロン姿で通学する好奇心旺盛な女の子だった。
大正11年(1922)、ロシアの舞姫アンナ・パブロワが世界公演の一環として日本にも来日。日本人がバレエに目覚めた貴重な公演だ。鹿乃子九歳、「瀕死の白鳥」を観たという。「瀕死の白鳥」を観て感激、帰宅して毎日廊下で白鳥になって踊ったそうだ。「子どもは何でも真似をする」と、築地小劇場で子どものための芝居を上演した時に小山内薫が書いているが、鹿乃子も白鳥になりきって廊下で舞い、優雅に倒れていたのだろう。家族は障子の蔭からそれを見て「また鹿乃ちゃん白鳥が倒れてる」と言ったかどうか・・・。

この話を何度となく何気なく聞いていたが、誰とどこの劇場で観たのか?は、鹿乃子の記憶はもはや定かではない。資料の裏づけが必要だが、今は聞き書きにとどめる。