聞き書き『モガ・鹿乃ちゃんの百年―裁縫』

モガ鹿乃ちゃん2

府立第五高女だけではなく、当時の女学校は「良妻賢母」を育てるのが教育の大きな柱だったから、裁縫は5年間の間に一通り縫ったそうだ。襦袢、長襦袢、女物単衣、男物単衣、袷などなど。最後に縫ったのが、なんと男物の五つ紋の羽織。
「紋というのはその家を表しているからね、紋を見ればどこの家の者だか分かるから、紋付きを着るのは、大事な時だから、背中の紋を合わせるのが一番難しいんだよ。ずれちゃいけないからね」。卒業する時に父・正二郎に羽織を縫い、贈った。口数の少ない父だったが「ほう」と言って喜んだという。鹿乃子は好奇心の強い17歳の少女になっていた。昭和4年、この頃、世の中は何が起きていたのだろうか・・・