聞き書き『鹿乃ちゃんの百年―カメその後』

モガ鹿乃ちゃん2

「東京は遠いから行きません。上海あたりなら良いけど」と言った女中のカメ。四国で生まれ育った。「お父さん(正二郎)が南海道に赴任していた時に子どもが生まれたから南海子(なみこ)って名前になった。その頃に来てもらった女中で、次に鹿児島に赴任しても一緒に来て、あたしが生まれた」。カメさんは南海子と鹿乃子を育てたようなものだ。正二郎一家が東京に行くことになり「記念に三人で写真を撮った。昔はカメラなんてものはどこの家にもあるものじゃなかったから、写真館でね」。残念ながら三人の記念写真は残っていない。「その後、カメさんはどうしたの?」「うん、四国に帰って結婚したけど、だんなが大した人じゃなかったとかで、離婚したそうだよ。カメは働き者だったから、一所懸命働いて金持ちになったって風の便りに聞いたよ」。

註・正二郎の赴任先が四国とまでは母も覚えているが、県名までは出てこない。